石川県の富士山
日本には別名「○○富士」と呼ばれている山がたくさんある。当然にしてコニーデ型の綺麗な
形の山容で、おらが在所の富士山から全国的にも名の通った「蝦夷富士」「津軽富士」「若狭富士」
「薩摩富士」などがある。
外国でも日本人のよく訪れる地方やかって移民した地域にそれらしい形の山があれば、「○○富士」と呼んでいたようである。
ことほどさように日本人にとって富士山は特別なのである。
そこで、石川県も遅れをとるまいと探してみました。有りました、有りました、石川県にも富士山が。
そして高爪山以外には三角点もあります。
・旧山中町(現加賀市)の南部にある 富士写ケ岳 は 江沼富士 とも呼ばれており、一等三角点がある。
・ 金沢富士 と呼ばれる 大門山 は金沢市と富山県旧福光町(現南砺市)の境にある。この呼称にはいく分親しみは薄いが……。
・ 能登富士 と呼ばれる 高爪山 は旧富来町(現志賀町)と旧門前町(現輪島市)の境にあって、漁船などの目印となるなど、目立つ山である。
石川県新庁舎展望ロビーから、海越しに見ることができる。
ここまでは、姿、形からも納得していただけると思いますが、次の3つはエーッと思われるかもしれません。
・旧鹿島町(現中能登町)の 富士山 は三角点の点名として富士山という名前がついているが、国土地理院の地形図には山名の表示はなく山容もそれらしくもなんとも
ない低い里山である。なぜ、天下の名称「富士山」がついたのか不明。
・ 小富士山 というのは輪島市の高州山の北東にある山で、国土地理院の地形図に山名が記されている。
・2つ目の 小富士山 は山中温泉の南、富士写ヶ岳の東北方向、谷向かいにある山である。登山道が無く、
坂ノ下峠から尾根伝いに藪をこいで登った。
[富士写ケ岳]
山名:富士写ヶ岳、点名:富士写ヶ岳、一等三角点、標高941.92m
基準点コード:TR1-5436-22-2901、5万分の1地形図名:大聖寺
撮影:平成10年12月29日
加賀南部の平野部や旧山中町(現加賀市)の南はずれからは綺麗なコニーデ型の山容を
見ることができる。我谷ダムの真上に位置し、3ケ所の登山口があり、2〜3時間で
山頂に達する。4月下旬、シャクナゲの花を求めて登山者が多い。
[大 門 山]
山名:大門山、点名:大門山、三等三角点、標高 1,571.59 m
基準点コード:TR3-5436-46-3401、5万分の1地形図名:下梨
撮影:平成12年11月12日
金沢市内からよく見える山で、「金沢のマッターホルン」と呼ぶ人もある。たしかにスイスのマッターホルンを
押しつぶしたような形をしていないでもない。しかし、この山を北寄りから見ると綺麗なコニーデ型
になる。好位置は金沢競馬場、河北潟辺りである。医王の里から林道を少し下った地点からも
谷越えに綺麗なコニーデ型の山容を望むことができる。
ことほど、石川県人にとってはよく目にする山ではあるが、登山道は富山県からしかない。刀利ダムから
荒れ果てた林道を溯るか、富山県南砺市西赤尾から林道を入ったブナオ峠が登山口。1時間20分ほどで山頂。
ブナオ峠附近のブナ林とムラサキヤシオの丸みを帯びた濃い紫色の花が印象的な山である。
[高 爪 山]
山名:高爪山、三角点なし、標高 341 m
5万分の1地形図名:富 来
撮影:令和元年12月1日
再建された鳥居と奥宮の社殿
海ごしに白山、富士写ヶ岳を望む
旧富来町(現志賀町)の北部に位置し、大福寺集落をとおる国道249号線から綺麗なコニーデ型の山容を見ることができる。
通称の「能登富士」の方がとおりがよい。林道から40分ほどで山頂。大福寺集落には加賀藩前田家ゆかりの高爪神社があり、
その奥殿が山頂にある。2007年3月の能登半島地震で麓の鳥居と山頂の社殿が倒壊し、その後再建された。この季節、葉
っぱが落ちて海越しに宝達山、白山、大日山、富士写ヶ岳などが望めることが確認できた。
遠く金沢などからも見え、海上では古くから航海の目標や沿岸漁業の海ダメとされたほか、地区民が厚い信仰を寄せている
霊山でもある。
名無しの[富士山]
点名:富士山、三等三角点、標高 168.02 m
基準点コード:TR3-5536-36-1901、5万分の1地形図名:氷見
撮影:平成13年11月24日
三角点の点名が「富士山」なのであって、なんでという気がする。なんの変哲もない里山である。
碁石ケ峰へ登る県道141号の登り口に位置し、林道が通じている。かって高畠集落から地獄谷川沿いの
林道=「健康の道・小金谷コース」途中から、地図をたよりに急な斜面を登る。登りきったゆるやかな尾根
上に落ち葉に埋もれるようにして三角点があった。
[小富士山]
山名:小富士山、点名:谷 内、三等三角点、標高 424.84 m
基準点コード:TR3-5636-07-8901、5万分の1地形図名:輪島
撮影:平成15年7月20日
地形図には「小富士山」と記されており、最近手にいれたカシミール
で周囲のいたる所から山容を確認してみた。どうも山容は山名とは関係がないようである。
という事前調査の結果から、今回は三角点の確認のみとする。鉢伏山から尾根伝いに林道をたどり、
支線を15分ほど歩いてゆく。平坦な山頂、林道脇に三角点があった。
いずれ山名の由来調査や、山容の写真を撮りにゆこうと思うが……。
<続報>平成16年12月23日
山の形から山名が付くというのは、一般的であり、まして「富士山」といえば山の形もそうに違
いない、という説は簡単には放棄できない。そこで、この小富士山が望めるもよりの集落「輪島市一乗」を訪ねた。
一乗は狭い谷を遡った行き止まりの集落である。国道を離れるとすぐ、正面に三角の山が見えたときは期待で
胸がふくらんだが、地図で方向を確認すると違う山。犬の散歩をしていたお婆さんに聞くと「あっちの山は知ら
ん、こっちは岳や」と小富士山には目もくれず高州山を指さす。山仕事にでたりするお爺さんでもいないかと捜
すが人の姿は無し。一応小富士山の写真を撮って退散した。
[小富士山]
山名:小富士山、点名:菅谷、3等三角点、標高 574.09m
基準点コード:TR3-5436-23-6001、5万分の1地形図名:大聖寺
撮影:平成24年5月20日
山中温泉の東南、富士写ヶ岳の東北方向にある山。点の記では、菅谷集落の背後から沢沿いにルートが記されて
いるが、記録が古いのであてにはできない。長年気にしていたのだが、このたび意を決して、坂ノ下峠から尾根伝いに1k
m近い距離の深い藪をこいでようやく登ることができた。
令和4年12月31日撮影
山名の由来は、富士写ヶ岳が近くにあることから、麓のどこかからか見るとそれらしい姿に見えるのではないか、
という思いを持っていた。今度、血墓山(国道8号線沿い、加賀市分校町地内、標高41.81m)から展望すると、まさに富
士写ヶ岳の左手に、尾根の流れなどが良く似た山容の小富士山が望めた。富士山型の山容に見える位置ではなかったが‥。